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私たちは,生命生体システムを工学視点から捉えて、医療やバイオテクノロジーへの応用を目指しています。近年、生命生体システムを工学的視点から見直すことによって、新しい横断型の科学技術が生まれています。このような科学技術を私たちはバイオメディカルシステムデザイン工学と呼んでいます。

工学的な視点とはどのようなことを意味しているのでしょうか。
現在の生物科学では、生物の仕組みや機能を明らかにしようとして、可能な限り細かく刻んで、究極は遺伝子DNAのレベルまで細かくして、細かくした要素がどのような仕組みになっているかを綿密に明らかにしようとしています。

一方、私たちの身体を考えてみますと、60兆個という想像を絶する数の細胞から構成されていますが、全ての細胞がばらばらではなく、うまく連絡を取り合って、運動したりして巧みに生命活動を行っています。即ち、60兆個の細胞が統合して、一つの生命生体システムを動かしているのです。

沢山の部品からなるシステムの仕組みを捉えるのは、工学が目指していることで、一つ一つの要素の役割を十分に生かして、システム全体で意味のある機能を発揮できるようにすることです。このような発想は従来の生物生命科学にはありません。


さらに生命生体システムの仕組みで重要な役割を演じている要因があります。それは力です。私達は地球の重力の影響を受けて生命活動を行っていますので、生命生体システムは常に力を感じながら(受容しながら)活動していることになります。このように力が生命生体システムにどのように関わっているかを明らかにする科学技術はバイオメカニクスと呼ばれ、極めて革新的な発見があり、ノーベル賞も1998年に授与されています。そこで、当研究室では、マイクロ・ナノからマクロスケールに至る力の影響に対するバイオメカニクスの研究を行っています。

今や生命科学の進展は、現代社会に大きな影響を与えています。特に注目すべきは、他の科学技術分野と融合して、これまでにない全く新しい科学技術が生まれている事実です。このような状況を第三の科学革命と呼ぶ人もいます。生命科学分野自体の進歩も勿論重要ですが、生命科学との融合によって、発想の転換がおこり、パラダイムシフトが実現します。当研究室ではこのようなパラダイムシフトの実現を目指して、共同研究をして頂いている生物医学系の先生方と共に学生諸君が熱意を燃やしています。当研究室では、生物医学系の研究者との共同研究が多いのですが、その理由は我々の独善を避けたいからです。我々の研究成果が生物医学分野の目からも意義のあるものになるようにそれぞれの分野の専門家との討論を密に行っています。




(1)細胞のシステム統合工学

生体組織の細胞は周囲の微小環境から様々な情報を受容することで全体として組織を構築している.従来の分子生物学的なアプローチでは生物システムを要素に分解し、個々の細胞機能を詳しく調べられてきたが、それだけでは組織や臓器としての機能は理解できない。すなわち,我々の体を構成する個々の「部品」を詳しく調べるだけでは,全体の「システム」を理解することはできない.生体組織や臓器は、沢山の細胞が集まって、まとまった機能を発揮している。このようなシステムを生体外で再構築するためには,流体力学やMEMS微細加工技術などの様々な工学の技術を駆使して細胞外の微小環境における対流・拡散・微細細胞配置などを統合的に制御する必要がある.また,細胞の集合体である組織を理解するためには、細胞を一つの要素として考え、要素が集合して組織になっている状態をシステム的に捉えることが重要になってくる。要素である細胞が集合して統合しているために、システムである組織がまとまった意味のある機能を発揮できると考えると、生体組織の機能は工学的に考えることができる。このような考え方を細胞のシステム統合工学と呼び,このコンセプトに基づく当研究室独自の組織再生テクノロジーを開発している。

  1. マイクロ流体デバイスによるシステム生命工学
  2. 肝臓再生のシステムデザイン工学
  3. 管腔形成のバイオエンジニアリング
  4. 三次元毛細血管ネットワークの再生工学


(2)バイオメディカル流体力学

血液循環系は、体内の60兆個の全ての細胞に酸素や栄養物を供給し、老廃物を回収して、生命現象を司っている。さらに特定な細胞に必要とされる酸素や栄養物を供給できるようにするため、局所の血管が血流配分調節を精密に行っている。即ち、血管は単なるパイプではなく、重要な機能を持つ組織である。そのような血管の機能が破綻すると極めて重篤な病気になる。そこで、流体力学による評価を基にした血管や血流の病気の診断・治療が必要となる。当研究室で行なわれている具体的なテーマは以下の通りである。

  1. 人工血小板のナノバイオメカニクス
  2. 脳内神経活動を支える血流と酸素輸送
  3. 脳動脈瘤の血行力学と低侵襲診断治療のバイオエンジニアリング
  4. 血管内治療に向けたステントのデザイン
  5. 腫瘍血管内血流の制御